世界の現場から~JVCの中の人ブログ~

国際協力NGO「日本国際ボランティアセンター(JVC)」のスタッフ・インターンが綴る、あんなことやこんなこと。

スーダン駐在員によるオンラインイベントに参加して思ったこと

 

こんにちは!広報インターンの庄司です。

 

前回のブログで、パレスチナインターンの松田さんが2020年インターン協働企画を紹介してくれました!

第三弾の公開目前を機に、今回交流を行った「スーダン」という国について少しでも興味を持った方に現状を知っていただきたいと思い、今回このようなブログを執筆させていただくことになりました!

 

少し遡りますが、2020年11月に行われたオンラインイベント「スーダン、激動の情勢と紛争下を生きる人々と共に~JVC現地駐在員報告会@オンライン~」に参加した私個人の視点から、スーダンの現状などをまとめていこうと思います!

 

スーダンについて何もわからないけど、なぜJVCや他のNGO団体が活動しているのか気になる、、、!という人や、アフリカ文化に興味のある人などなど。少しでも何か感じてもらえたら嬉しいです。ぜひご覧ください😊

 

 

 



どんなイベント?

本イベントでは、スーダンから一時帰国中のJVC駐在員今中航さんが、昨今のスーダン情勢を現場の視点から伝えてくださいました。また、今年スーダンを訪問されたジャーナリストの堀潤さんを聞き手に迎え、当時の写真や30分に渡るドキュメンタリーも共有してくださいました!

 

 

✦イベントのアーカイブYoutubeでご覧いただけます!✦

 

 

イベントのタイトル通り、現在スーダンでは激動の情勢が繰り広げられています。

2019年、スーダンで30年続いた独裁政権が市民デモにより崩壊し、約3年後の民主化に向けて新政権が発足しました。

一方で、昨年6月には首都ハルツームで軍・治安部隊による虐殺が起こり、100名以上の方が殺害されました。また、経済状況の悪化により、人々は以前よりも困難な暮らしを強いられています。加えて、2003年から続くダルフール紛争の和平合意が、今年10月に一部組織間で行われました。終結に向け前進したものの、未だ課題は残っています。

 

現地で市民と生活してきた今中さんからみたこの状況は、どうなっているのでしょうか?

スーダンの基本情報からみていきます!

 

スーダンってどんなところ?

 

面積:188万km2(日本の約5倍)

人口:約4000万人

公用語アラビア語、英語、その他部族後多数

宗教:イスラーム(90%)、キリスト教(5%)

民族:200以上(アラブ、ヌビア、ヌバ、フール、他)

通貨:スーダン・ポンド(SDG) ex.1SDG=1.8円(12月4日時点)

平均給料:※月5千円程 ( https://www.worlddata.info/average-income.php.)

 

略史:

1956年 スーダン独立

2003年 ダルフール紛争

アラブ系遊牧民族とアフリカ系農耕民族の間で昔からあった、水や牧草地などを巡る抗争を始め、アラブ系を中心とした社会、経済などを背景に、アフリカ系の人々による反政府組織とスーダン政府の間に対立が生まれました。その後スーダン政府軍と反政府組織軍による衝突で、大規模な虐殺や破壊に進展。約30万人?(※確認)以上の人が殺され、多くの難民が出ています。

2005年 南北内戦終結

2011年 南スーダン分離独立=南スーダン国誕生

2018年12月 スーダン全土で反政府デモ発生

2019年 4月 軍事クーデターが起き、政権崩壊

→しかしその後も軍部が指導し続けていたため、デモは続いていました。

2019年 6月 軍・治安部隊による虐殺がハルツームで発生

→100名以上の人が殺害され、未だ行方不明の人も。

 

200を超える多民族国家であり、国土が広く自然豊かで、金などの資源も豊富なスーダン

しかし、軍事独裁政治により利益は民衆へ還元されないばかりか、インフレまで起きていました。そんな中での「パン値上げ」を発端に、2018年12月、全土で反政府デモが始まりました。1956年の独立以降、ダルフールや南北、民族間、政府と反政府軍など次から次へと紛争が起こり、その影響でおよそ400万人もの難民、避難民が各地へ逃れました。現在も多くの避難民がスーダンで避難生活をしています。

 

JVCスーダン/南スーダンで活動を始めたきっかけって?

 

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スーダンの地図

 

 

JVCは、南スーダンスーダンから分離独立する前の2005年にダルフール人道支援を始めました。

 

2006年から首都ジュバで故郷に帰還する難民への支援を行い、2010年に南コルドファン州のブラム都で平和構築などの活動を開始。

2011年6月にカドグリで紛争が起き、JVCのカドグリ事務所も一旦活動を停止しましたが、その紛争で避難してきた人たち(①プラム都→カドグリ ②イーダ難民キャンプ)を対象に緊急支援を開始しました。

 

現在は、南スーダン・イーダ難民キャンプでの児童保護・幼稚園支援に加え、

スーダン・南コルドファン州で紛争の影響を受けている避難民・帰還民を対象とした、生活・教育環境の改善及び信頼醸成支援を行っています。

 

今年1月からは、正規の学校に通うことができない子どもを対象に「代替教育プログラム(ALP)」として補習校を実施中



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停戦により分断されていた地域の封鎖が解け、久しぶりに家族が再開し、集まることができた様子。撮影:堀潤さん



これら活動のほとんどが、難民・避難民支援であることがわかると思います。

それだけ、スーダン/南スーダンでは紛争が多く、一つの場所で安定した暮らしをすることが難しい。しかし、スーダンの人々はとても穏やかで、家族を大事にしていて夢や目標を持っている人がたくさんいるなあ、と堀さんの撮影した映像を観ていて感じました。

 

 

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ロバに乗った子どもたちが、地雷原を越えて水を調達しに行く様子。撮影:堀潤さん

 

2020年、今のスーダンはどうなってるの?

 

驚いたのは、革命後もとどまることを知らない激しいインフレ(去年と今年の12月を比較して210%)です。

2SDGだったスーダンの公共バスは、今では20SDGとなりました。燃料費の補助金削減により、ガソリンの価格も今までの4倍に。

 

「そもそも市民革命が起きる前夜、激しいインフレによって銀行には長蛇の列ができ、人々はパンさえ買えない。こういったことが、政権を倒す抗議デモのきっかけに繋がった。政権は倒したものの、経済状況はその頃よりも厳しくなっている。(堀さん)」

 

一般の人の給料が上がらない反面で、政府など一部の人に利益が集中していることが、生活困窮の要因の一つとして挙げられます。

 

インフレ、燃料/ガス/パン不足、コロナによるロックダウン

加えて、今年は100年に一度と言われるほど大きなナイル川の氾濫が起きました。50万人を超える被害者の中には、路上生活を強いられる人もいたそうです。この氾濫により、マラリアの流行までもが起きました。

医療体制が弱いスーダンでは、災害による市民の混乱も大きいです。

 

JVCの活動地カドグリでは、今年5月には個人間で起きた家畜の盗難を発端に、大規模な武力衝突へ進展し、死者数は50名を超え多くの社会インフラが破壊されました。それでもJVCはカドグリにて、教育を受ける機会がない子どもたち向け約400名を対象に補習学級を行っています

 

参加者のマルガニ君(16歳)は、「補習校が再開して嬉しい。今までは将来のことは補習校が終わってから考えたいと言っていたが、今は病人を救うために医者になりたい。」と言います。

 

ずっと紛争と生きてきた地域だからこそ、継続・安定して教育を受ける機会が少なかったそうです。堀さんの映像でも、「教育がないと戦争を繰り返してしまう。」とカドグリの学校の先生は話していました。

 

「過酷な状況で生まれた人たちにたくさん出会った。ただ、自分たちで生活していくことが大事だから与えすぎないこと。欲しい物があるならそれを買うために何をしたらよいかを提案する。」そう話す今中さんから、国際協力のあり方を考えさせられました。



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堀さんの映像の一部。美しい光景です。



市民革命後のスーダンの様子は?

 

2019年7月、エチオピアアフリカ連合が仲介し合意文書に調印したことで、スーダン民主化の道を歩き始めました。当時の様子を今中さんがブログに載せているので、詳細はこちらをご覧ください✨↓

JVC - スーダンに吹いた新しい風 - スーダン日記 (ngo-jvc.net)



革命後の社会情勢として、女性・マイノリティ人権の尊重イスラームの棄教の死刑撤廃を始めとする法制度の改正表現の自由拡大など、明るい出来事もありました。

外務大臣に女性が任命され、閉鎖していた映画館がオープンし、YoutubeやTiktockで政治の話をする若者も増え、革命中の映像も発信していたそうです。ちなみに、革命後に再開した映画館でのオープニングセレモニーは、エジプトのコメディー映画が上映されたそうです。

 

イスラム社会や独裁政権下において叶わなかった、人権・自由が少しずつ市民のもとに戻ってきている様子が伺えます。

 

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今年のJVC国際協力カレンダー2021の表紙にもなった、スーダンの写真。カレンダー写真は、全て堀潤さんが昨年旅の道中で撮影されたものです。スーダンの人々の服装はとてもカラフルでおしゃれだ、、!と思いました😳写真集あったら見たいなあ~🤤

 



まとめ

 

30年続いた独裁政権を倒した、スーダン市民の勇気ある行動を尊敬します。

 

ついに、これから民主化の道を歩んでいくという中での虐殺や市民には耐え難い経済状況。まだ完全に終結したとは言えない、ダルフール紛争と南コルドファン紛争の和平合意。

民族、市民の数だけ考え方があるからこそ、同じ方向を向いて道を歩むことがどれほど難しいことなのかよくわかります。

 

自分たちの信じる道に向かって、他者を傷つけるやり方ではない方法で向き合うことはできないのか。時間はかかっても、考え方の違いで無残に殺される人がいなくなることを願います。紛争の終結に向け、一人でも多くの市民が納得できる道を彼らと共に模索していくことが、国際社会の一員として必要だと改めて感じました。

 

 



最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

 

私たちが今回交流した、スーダンに住む同世代の人びとの恋愛観や将来の夢などは動画でたっぷりご紹介しましたが、今回は「スーダンという国をまた違う視点から知っていただけたら嬉しいです。

 

スーダンに友だちができて喜んでいる私ですが、これからは彼らが生きているスーダンという国の歴史、背景、社会情勢について知りたい、と強く思うようになりました。

 

スーダン×日本「文化交流」最終章の第三弾もお楽しみに!

それでは、また!🤗🐞

 

 

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