世界の現場から~JVCの中の人ブログ~

国際協力NGO「日本国際ボランティアセンター(JVC)」のスタッフ・インターンが綴る、あんなことやこんなこと。

インターンが見た!【プロサバンナに関する国会議員主催勉強会】

こんにちは!JVCパレスチナ事業インターンの太田百恵です。

2月19日に、プロサバンナに関する国会議員主催勉強会が開催されました。

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概要は以下のリンク先にあります。

www.ngo-jvc.net

 

今回は、私を含めたJVCインターン2名がこの勉強会に参加したため、プロサバンナ事業についてまとめつつ、勉強会の感想を記したいと思います。

 

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勉強会の内容

勉強会は、次のような流れで行われました。

1.挨拶

2.前回勉強会を受けた趣旨説明

3.テーマ1(モザンビーク行政裁判所での違憲判決)についての議論

4.テーマ2(JICA掲載文)についての議論

5.まとめと今後

最初には、プロサバンナ事業の説明と、これまでの流れがざっくりと行われました。

 

プロサバンナ事業ってなに?

まず、プロサバンナ事業とは、アフリカのモザンビーク北部地域で行われている、日本のODA事業のひとつです。ODAは、政府開発援助のことで、私たちの税金が使われています。

この事業では大規模農業開発を通して、モザンビークの小農たちの暮らしが大きく向上することを狙いとしています。

 

しかし…この事業では様々な側面で問題があります。

・住民主権が蔑ろにされている。
・土地収奪が行われている
・事業が不透明である     など

 

2012年には、現地の農民組織UNAC(全国農民連合) がプロサバンナ事業に対して声明も出しています。

このようなプロサバンナ事業の事態を考慮し、議員主催で勉強会が開催されています。

今回の論点は主に二つあり、一つは現地裁判所で出た違憲判決について、もう一つはJICAの掲載文についてです。

それぞれ見ていきます。

 

テーマ1(モザンビーク行政裁判所での違憲判決)についての議論 

www.youtube.com

(【前半】第2回国会議員主催勉強会 動画)

 

2017年に、モザンビーク弁護士会が「プロサバンナ調整室が設置されている農業省」を裁判に訴えました。
この訴えは2018年8月に全裁判官に認められています。

 

勉強会当日には、以下のような判決文の日本語仮訳が配布されています。

プロサバンナ事業に関するマプート市行政裁判所による判決文(一部抜粋)

2018年9月27日

モザンビーク共和国の名において判決を下す。

マプート市行政裁判所は、裁判官全員一致で、原告「モザンビーク弁護士会(OAM)」による訴えを受け入れる。

この結果を受けて、被告である農業食糧安全保障省に対して、市民の自由と権利を侵害する可能性のある計画・活動および決定に関する公益に関する情報ー特にプロサバンナ事業によって影響を受けるコミュニティの土地・食糧安全保障・栄養に関連する情報ーの全面開示を命じる

この判決では、人びとの知る権利が侵害されている可能性があるため、農業省に10日以内の情報開示を提示していますが、未だ適切な対応がされていません。

 

市民社会側(NGO・学者・議員)の意見まとめ

・訴えられたプロサバンナ調整室はJICAが設置し、スタッフを派遣し、運営資金を拠出している。そのため無関係ではない。

・JICAの外務省開発協力大綱や外務省の開発協力大綱でも、冒頭に「情報の公開」が大事であることは書かれている。すでにプロサバンナ事業には35億円以上の税金が投入されているのだから、国民に説明責任を果たしてほしい。

・JICAは農業省が裁判で訴えられたことも、新聞を見て知った。その程度の関係の上で、農業省との信頼関係は築けていないのではないか。

・相手国が違憲といったものに対して、日本政府はもう手を引くべきではないか。違憲がでるのは相当なものであり、正当性がないということである。

 

JICA・外務省側のまとめ

・プロサバンナ調整室の設置は、農業省からである。スタッフの仕事もプロサバンナ事業の調整にとどまっており、指揮は基本的には農業省が出している。

・今回の判決は情報公開が不十分だということで理解している。

・農業省に確認したら必要なことはやっているということで、今は裁判所がボールを持っている状態。

・事実確認や意見を受けたものについては、今後早急に対応する。

 

テーマ1での議論のポイントは、違憲判決は相当重いものであるため、事業から手を引くことを強調されているが、JICA・外務省はその意見も含め、早急に対応するということです。

 

テーマ2(JICA掲載文)についての議論

www.youtube.com

 (【後半】第2回国会議員主催勉強会 動画)

 

JICAのホームページにて、「モザンビーク国プロサバンナ事業に関する一部報道等について」という掲載文が載っています。

前回勉強会時には、市民社会側はこれらの内容の記載は事実と異なるものであり、削除を求めましたが、1月17日にJICAより次のような回答が来たといいます。

<JICA回答>「プロサバンナ事業に関する一部報道について」の削除についてのご意見について検討いたしましたが、当該内容はJICAが承知しております事実を述べたものであり、削除が必要とは考えてございません」

 では、これはいったい何が問題とされているのでしょうか?

後半動画部分にあたるテーマ2を、まとめていきます。

JICAの掲載文に対して、一つ一つ質問が出されていました。今回は1,2,4の部分に重点が置かれ、問答が行われています。

 

掲載文の責任の所在

JICA組織として作成した。昨年9月のTBS報道だけに特化していなく、これまで個別にいただいたものに対してまとめたものである。

 

1.「プロサバンナ事業に賛成している農民は1人もいない」との発言について

小農リーダーの名指し批判という人権侵害
JICA) 賛成する農家の話ではなく、開発事業の参加者が4,800人である。その方々からは好意的な意見をいただいている。

市民社会側)2019年9月4日午前に、小農リーダーと外務省・JICAが面談した。そこで、JICAが「4,800農家に支援し、事業に賛成」と説明を受け、小農リーダーが「どのコミュニティのどの小農のことか」と尋ねた際、JICAは回答を拒否した。
それをうけて、小農リーダーが「そんな農民は一人もいないんじゃないか」と言った。その経緯を無視して「小農リーダーの発言が事実でない」と名指し批判するのは人権侵害に他ならない。

 

(1)賛成する4,800人の農家とはどこの誰なのか

市民社会側)また、4.800農がどこの誰かを示せずに、どのように賛成する農民の存在を証明できるのか。


JICA) 賛成したことへの非難がよせられ、経済活動に支障をきたすのではと考えている。

市民社会側)賛成派の農民の名前は伏せるのに、反対する小農リーダー個人の名前を出すのは良いのか。また、現地の市民社会や農民は賛成に回った人々を非難したことはない。ここにお金を投与しつづけているJICAの問題だと言っている。

 

(3)「対話・公聴会には述べ約5,500名の農民が参加」と掲載されていることについて
JICA)地域住民・農民と掲載するべきのところ、間違えて農民だけ書いてしまった。

市民社会側)去年の勉強会では3,000人のうち3割が農民だったといっている。つまり、900人だけであり、賛成の声だけではなかったことも認めている。

 

(4) JICAもモザンビーク政府も、公聴会に問題があったと認識しているはずだが、掲載文にはその記載はないことについて


JICA) 批判については認識している。引き続き事業の意見への反映をしっかり支援していく。

市民社会側)公聴会はJICAが700万円投入して開催している。しかし、日本からは誰も参加しないためJVCの渡辺さんが参加してきた。そこで見えてきたのは、➀政府与党系住民の参加が多数、②政府による威圧・抑圧的発言や弾圧、③反対しそうな人たちへの参加妨害 といった問題である。

 

2.「プロサバンナ事業を直ちに中止すべき」という発言について

JICA)モザンビーク政府が望まない事業を強行することはないが、事業を継続していく方針である。

市民社会側)農民が反対していても、モザンビーク政府が望めば事業を強行するというのと等しい。プロサバンナ事業では、PEMと呼ばれる投融資と一体になったモデル開発事業がある。企業団体の投融資が先に開始されているが、その7企業・団体のうち、3企業・団体に、➀利益相反、②土地収奪、③プロサバンナ事業ではないとだまして融資、といった問題がある。

 

4.事業の詳細は地域住民に知らされず、話し合いへの参画もできないとの指摘について

・2018年4月以降、5回対話を実績としてカウントしているのはなぜか
JICA)支援した実績というのを、JICAとして対話の回数を記録したと書いた。

市民社会側)2018年4月以降の場というのは、2018年6月にNo to prosavana campaign という農民も参加する市民社会組織ネットワークから反対の声明がだされている。UNAC(農民組織)からも反対のプレスリリースが出されている。

 

まとめ

市民社会
→この掲載文は、JICAが組織として掲載している重大な責任があるものだが、既に1の(3)が間違っているように、事実と反しているものとなっている。撤回するべきである。

 

JICA・外務省側
→修正すべきだという意見ということで持って帰る。

 

動画の中では、現地での様子や、資料に基づいたプロサバンナ事業についての事実が詳細に語られているので、必見です。

 

感想 

今回の勉強会を受け、インターン2名は何を感じたのでしょうか。

 

太田百恵(2019年度パレスチナ事業インターン)

市民社会が、現地の声を代弁して「戦っている」、まさにそんな場であることを感じました。
市民社会の方々が、現地で見たことファクトを使用して、論理的にこの事業で起きている問題を説明しているのに対して、JICAや外務省は的を得ていない答えを繰り返している様子は、なんともすっきりしないです。

ただ、印象に残ったのは外務省の方が「うんうん」とうなずきながら聞いていたことです。きっとみんな熱い志を持って入ってくるのに、いつから体裁や出世を気にしてしまうようになるのだろう。いつから現地のことを考えない”支援”をしてしまうようになるのだろう、と思います。

私ができることは、同世代に発信していくこと、おかしいことには「おかしい」と声を挙げていくことだとも思いました。 

 

守屋あすみ(2019年度広報インターン)

 これまで2回に渡りプロサバンナ事業に関する勉強会に参加してきて、

初めは事実内容を把握し、議論されていることを理解することで精一杯でした。

太田さんが簡潔にまとめてくれたこの記事も実際の議論は4時間を超えるものです。

国会の議論のように、「責任」の所在が明確にならない議論が続く中で、

市民社会側が最も強く主張しているのは誰が責任を取るのかということではなく、

「人権」を守ってほしいということです。モザンビークの人々の生活が大きな権力によって阻害され、批判や中傷で小農代表者の命が危険にさらされているという事実が現実にあるのだということを知って、「小農を営む人々は、ただ昔から続けてきた自分たちの暮らしを守りながら生きていきたいだけなのに、なぜそれが認められないのか?」という疑問が心に残りました。

そして、日本国民の税金が投入されている以上、今のままでは私たちがその事業に加担していることになっていると知った時、この事実を多くの人に知ってほしいと思いました。

 国際協力を志す人ならよく耳にするJICAについて、素晴らしい事業を行っているという側面もある一方で疑問視するべき側面もあるということ。様々な側面から物事を見て、知り、学び、判断していく能力が市民社会の一員として必要不可欠だと強く感じました。

 

最後に

プロサバンナ事業について、定期的に情報を見たい!という方は、ぜひ以下のTwitterを見てみてください♪

 

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最後までご覧いただきありがとうございました😊

 

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