こんにちは!国際協力NGO「日本国際ボランティアセンター(JVC)」広報インターンの三浦です。
今回は、前回に引き続き、2015年にJVCのHPで公開されたスタッフインタビューを紹介します!
国際協力分野やNGOで働く人って一体どういう人たちなんだろう…?という疑問が解消される内容になっているかと思います!
国際協力に興味がある人、就活を控えている人(私もその1人)、NGO職員のバックグラウンドに興味がある人…皆さんにとって面白い内容だと思いますので、ぜひ楽しみながら読んでください!
注:役職は2015年当時のものとなっており、現在とは異なる場合がございます。予めご了承ください。
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こんにちは。広報インターンの清水です。
今回のインタビューは、2014年度のJVCパレスチナ事業インターンを経て、今年度からカレンダー事務局として働く、橋本貴彦さんです。10代はサッカー、20代は海外、30代は保育士と、経験豊富な橋本さんは"保育と国際協力をつなげる"ことを目標にしているそうです。どんなお話が聞けるのでしょうか...楽しみです!
はじめに...橋本さんはアラビア語が話せると聞きました。なぜですか?
今はアラビア語を使う機会もなく、あまり話せないのですが、高校卒業後、専門学校に行って、アラビア語を勉強していたんです。アラビア語は難しいけれど、すごく面白くて表現が豊かな言語だと思います。
清水:どうして、アラビア語を?
小さい頃から、エジプトにまつわる遺跡や文字に興味があり、遺跡の写真を見て、「昔ここに人が住んでいたんだなぁ」などと想像をめぐらすのが、大好きだったんです。小学校の2年生の時、女の子の友だちから借りた「王家の紋章」という少女漫画を読んで、将来は考古学をやってみたい!と思っていました。自分でヒエログリフ(古代エジプト象形文字)の入門書を買ったりして、本格的に考古学を学びたいと思いつつも高校時代はサッカーに夢中になり、大学受験に乗り遅れてしまいました。かといって浪人して勉強し直すのもなんだかもったいないような気がして、この際、エジプトの遺跡や考古学に近い分野のアラビア語を勉強しようと思って、高校卒業後は東京・三鷹にあるアラビア語の専門学校に2年間、通うことにしたんです。在学中1年生の時に、外務省がヨルダンで大使館職員を募集していることを偶然知りました。試しに応募してみたら、たまたま合格したので専門学校を休学して、20才から22才までの約2年間、ヨルダンにある大使館で総務のような仕事をしていました。
20才、初めての海外が"ヨルダンでお仕事"なんて、不安はありませんでしたか?
実は、行きの飛行機の中で泣いちゃいました。(笑)それまですごいワクワクでウキウキだったんだけど、飛行機でたくさんの外国人に囲まれて、いざ外国での生活が始まると思うと急に心細くなってしまって、恥ずかしいことに、20歳にして泣いてしまいましたね(笑)
しかし、若いうちに海外にいく機会があって、お金を頂きながら生活をしたことは本当に良い経験でした。周りのスタッフは、みんな年上だったので甘やかされ、とても可愛がってもらいました。仕事がお休みの日には、大好きな遺跡で読書をしたりしていました。当時のヨルダンは、あまり観光地化されていなかったので、のんびりしていて読書をするのにぴったりな、のどかな雰囲気でした。あとは、ローカルスタッフの家に遊びに行ったりもしました。お父さんくらいの年齢の方だったので、親しみを込めてアラビア語で「アビ-(私のお父さん)」と呼んでいましたね。
復学して、専門学校卒業後はなにをしていたんですか?
専門学校卒業後は、ドイツに1年半ほど保育の勉強をしに行き、帰国後は日本で保育士として10年間、仕事をしていました。元々子ども好きだったこともあり、アラビア語の専門学校に通っているときから、学校近くの保育園でアルバイトをしていました。実際に働いてみると、子どもが好きなだけでできる仕事ではないということが身をもって分かり、保育は奥が深いな、思いました。ですからヨルダンから帰国して復学をした後には、通信教育で勉強をして保育士の免許を取得しました。その後はインターンシップのような感じで1年半ほどドツへ、保育の勉強をしに行きました。お給料は出ず、ヨルダンにいた時に稼いだお金を使っていったのですが、本当に楽しかったです。はじめに語学の研修があり、その後シュタイナー教育に基づいた保育園で実習を行いました。ドイツ語も実践しながら少しずつ覚えていき、ドイツ語で保育をしていました。こうして振り返ってみると、僕は自分がやりたいなと強く望んだことは叶えてきたかな、と思いますね。
清水:シュタイナー教育とは、なんですか?
一言では説明しにくいのですが、キリスト教の考え方が基礎にあって、子どもの内面には霊的側面からみるいろいろタイプがあるということを前提にしています。その霊的な作用による子どもの気質を理解しながら導いていくという、人智学と言う学問から生まれた教育方法です。お部屋を静かにしてわらべ歌をうたうところとか、日本の保育にあっている所もあると思います。
橋本さんが考える、日本とドイツの保育の違いはなにかありますか?
まず保育園と幼稚園は対象年齢が違うし、シュタイナーをドイツの幼児教育としてしまうのは少し乱暴ですが...。
日本の保育の大きな特徴は、発達年齢で分けて年齢別で保育をするところですね。(最近は異年齢教育も増えています。)
一方、シュタイナー教育では3~6歳までの異年齢教育を行い、家庭の雰囲気を尊重した教育方法をとります。自然素材を使ったおもちゃが多く、自然光やろうそくの灯りの中で歌を歌ったり素話をしたりします。
保育園でアルバイトをしていた時にシュタイナー教育というものを知って、紹介する本の中では子どもたちはとても静かでおとなしいんです。「この教育方法を身に着けたら保育がすごい楽になるんじゃないか。そんな魔法のような方法があるなら自分の目で見てみたい!」と思ってドイツへ勉強をしに行ったのですが、結果的に、どこの国の子どももなかなか言うことを聞いてくれないのは同じでしたね。(笑)しかし子どもと波長をあわせて保育を進めて行く方法などを学んだことはとても有意義で、今も生きているなと思います。
ドイツから帰国してその後の10年は保育一筋。なぜそこからJVCのインターンを始めようと思ったのですか?
保育園では多くのことを学び成長させてもらいましたが、10年という区切りを迎えたところで、以前から頭の片隅にあった、若い頃の海外での経験を活かした国際協力の仕事ができないかと思うようになりました。そこで保育園の正規職員を辞め、児童相談所の一時保護所でアルバイトをしながら、JVCでインターンを始めました。
清水:たくさんの事業がある中でもなぜパレスチナインターンを選んだのですか?
ヨルダンの日本大使館で働いていた時に、初めてパレスチナの人たちに出会ったんです。ヨルダンにはたくさんのパレスチナの方がいて、大使館にも現地のスタッフとして働いていました。当時はシンドラーのリストやアンネの日記など、ユダヤ人の迫害の歴史しか知らなかった自分にとって、イスラエルがパレスチナに対して行っている事やパレスチナの人々が現在おかれてる状況を直接見たり聴いたりした事は、色々考えるきっかけとなりました。この経験があったので、迷わずパレスチナインターンに応募しましたね。
そしてインターンを終える頃に、当時カレンダー事務局をしていた大村さんが広報担当に移ることになり、カレンダー事務局の求人が出ました。元々、美術とかデザインが好きだったのでカレンダーは面白いなと思ったし、なによりJVCと関わりを持つことで勉強になるだろうなと思ったので、求人に応募し、働くことになりました。職員1年目が終わったばかりで、まだまだ色々と模索中ではありますが、これからは、自身の専門である「保育」と「国際協力」をつなげることができればと思っています。
ところで、橋本さんは3人姉妹のパパだそうですね!教育における工夫やエピソードはなにかありますか?
保育園で働いていた時は、園児の保護者の方と子育てについて話していて、「個性があっていいじゃない」とか「今すぐできなくても、いいじゃない」とか言って、子供を褒めて育てることを奨励していました。しかし、いざ自分の子どもとなるとまずは苦手な部分をなくしてから、他の能力を伸ばそうなどと欲が出できちゃうんですよね...。親になるって難しいなぁ、と日々実感しています。
「人を傷つけない」、「相手のことを考えて行動する」、「自分の頭で考えて行動する」この3つは口を酸っぱくしていっています。やはり、人を傷つけることはしてほしくないなと思っていて、悪気がなかったとしても、そういうことがあった時には僕も泣きながら怒った事がありました。
また「今考えて、なにが必要なのか」「どうやったら相手に伝わるか」など考えながら行動して欲しいと思っています。例えば、テストで結果が悪かった時などは、「間違ったところをきちんと確認してノートを作ったりして、自分の中で完結させてください。」という風に伝えることが多いですね。でも、橋本家は、「1年に3回学校をずる休みをしても良い(申告して理由が認められた場合)」と言うルールがあったりと、自由な所もあります(笑)
最後に、カレンダー事務局としてJVCカレンダーの魅力を教えてください!
JVC国際協力カレンダーは、30年目を迎え「JVCの顔」といえる存在です。このカレンダーでまず、多くの方にJVCを知ってもらえたらなと思っています。毎年約1万5,000部が売れ、事務所から少しずつ在庫がなくなっていく様子は、子どもが巣立って行くような感じがしてとても嬉しいです。
【インタビューしてみての感想】
元保育士さんということもあり、穏やかな口調や雰囲気になんだか安心感を覚えます。しかし物事に真っすぐと向き合う姿勢や内に秘める想いは、とにかく熱い方だと思いました。また経験豊富で引き出しの多い橋本さんのお話は、聞けば聞くほど面白く、まだまだインタビューし足りません!(笑)
【次回予告!】
次回は、橋本さんが一言で表すと
「ほほ笑むダイナモ!(ダイナモとは発電機のことです。微笑みを絶やさず、いつも0からいろいろなものを生み出すパワーを持っている人)」だとおっしゃるあの方にインタビューします。乞うご期待!